事業所得と雑所得のどちらで申告すべきか

1つ前の項目で、アフィリエイトやネットビジネスの収入について確定申告する場合は事業所得又は雑所得として申告するとお伝えしました。
それでは事業所得と雑所得のどちらで申告すべきか説明していきたいと思います。

結論から申し上げますと、所得税基本通達35-2に基づいて判断することが最近では一般的です。

同通達は2022年に改正が行われたもので、比較的新しいものです。
これまでは判例に基づいて判断することが通例でしたが(一応、今でも判例に基づき、社会通念で判定することが原則です。)、かなり曖昧な基準であったため税理士にとっても判断が難しい状況でした。
しかし、昨今では働き方の変化により兼業・副業が盛んになったため、納税者にわかりやすい基準を設けて正しく申告することを促す必要があったのだと思われます。

それではこの通達の内容を見てみましょう。

所得税基本通達35-2において、「営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得 」について、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。 なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。」とされています。

事業所得と業務に係る雑所得の区分については、判例に基づき、社会通念で判定することが原則です。

しかしながら、その所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合には、その所得を得る活動について、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念での判定において、事業所得に区分される場合が多いと考えられます。
(注)その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合 例えば、その所得の収入金額が、例年、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合 その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。
他方で、その所得に係る取引を帳簿に記録していない場合や記録していても保存していない場合には、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有しているとは認め難く、また、事業所得者に義務付けられた記帳や帳簿書類の保存が行われていない点を考慮すると、社会通念での判定において、原則として、事業所得に区分されないものと考えられます。
ただし、その所得を得るための活動が、収入金額300万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで、所得区分を判定せず、事業所得と認められる事実がある場合には、事業所得と取り扱うこととしています。

文章だけだとわかりづらいため、次のイメージをご覧ください。

●事業所得と業務にかかる雑所得等の区分(イメージ)

収入金額 記帳・帳簿書類の保存あり 記帳・帳簿書類の保存なし
300万円超 おおむね事業所得(注) おおむね業務にかかる雑所得
300万円以下 業務にかかる雑所得※

(注)次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することになります。
①その所得の収入金額が僅少と認められる場合
②その所得を得る活動に営利性が認められない場合

*国税庁「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」より引用

雑所得とはどのような所得区分か

さて、ここからは雑所得についてネットビジネス・アフィリエイトの収入を申告するために知っておきたい基本的なことの説明に移ります。

まず、雑所得とはどのような所得区分かということが気になると思います。
簡潔に説明すると、次のようになります。

所得税には10種類の所得区分があります。
雑所得は、それら10種類の所得区分のうち他の9種類のどれにも当てはまらない所得のことをいいます。

そんな説明をされても、他の9種類も同じことでは…?
…と思いますよね。
上記の私の説明だけだと、そのような感想になるのは当然でしょう。
ただし、他の9種類の所得区分は具体的に定義することができます。
例えば、給与所得は勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
また、退職所得は退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいいます。
このような具合です。
一方、雑所得は具体的に定義することが困難であるというのが実際のところです。
そのため、上記のように他の9種類のどれにも当てはまらない所得というように説明されるとお考えください。

ここまでの説明は何となく理解できましたでしょうか。
そして何かにお気づきではありませんか??
そうです。
雑所得がどのような所得かを理解しようとすると、前提として他の9種類の所得区分についても理解しないといけないことになるのです。

というわけで、その9種類の所得区分についても詳しく解説していきます。
…といきたいところですが、ここではあまり重要ではないため説明は省略します。
ただし、事業所得については既出のとおりアフィリエイトなどのネットビジネスの収入と深く関係しています。
これについては次の項目で解説していきますので、そちらをご参照ください。

雑所得の金額は、①公的年金等と②公的年金等以外のものの合計額です。
ここでは、あまり関係がないと思われるため公的年金等については省略します。

②公的年金等以外のものは、次のとおり計算します。
総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得

総収入金額と必要経費の内容などについては、それぞれネットビジネスやアフィリエイト収入の集計、必要経費の控除の項目で説明します。

Next→事業所得についての原則的な考え方
Return←確定申告の内容